梅雨らしい梅雨が来ないうちに本格的な夏を迎えてしまいました。何という暑さでしょう!!!
毎日、暑いですね、が合言葉になってしまっています。
今日は、この時期から増えてくる、食中毒についてお話します。 |
食中毒というのは、食物の中に混入した微生物により、下痢や嘔吐などの症状を起こした状態をいいます。
原因としては、サルモネラ菌、病原性大腸菌、ブドウ球菌、キャンピロバクター、腸炎ビブリオ、などの細菌、小形球形ウイルスなどのウイルスがあげられます。
細菌性食中毒は、大きくわけて、細菌が出した毒素が原因で症状を引き起こすものと、細菌そのものが腸に入って増殖して悪さをするものとがあります。
今回は、細菌性食中毒のうち、病原性大腸菌についてお話します。
細菌性食中毒、というと、まず始めに皆さんの頭に浮かぶのは、O-157ではないでしょうか。
大腸菌は、通常でも腸の中に存在する菌ですが、中には毒素を出したり、腸に炎症を起こしたりするものがあります。毒素を出す大腸菌の代表は、有名なO-157です。他にも、O-26,O-111なども毒素を出します。病原性大腸菌O-157などが出す毒素はベロ毒素、と呼ばれます。この毒素は非常に強毒で、出血性腸炎や溶血、腎不全、脳症などの溶血性尿毒症症候群(HUS)をひきおこすことがあります。 |
感染経路 病原性大腸菌は、肉類、土壌、野菜などに存在し、人に感染します。また、井戸水、仕出し弁当、加工食品により、集団食中毒をおこしたこともあります。ハンバーガーの肉とか、牛角切りステーキ等の中の方が生焼けで、集団食中毒が発生しています。また、感染した患者さんから他の人への2次感染も発生します。
非常に少ない菌量(50コほど)で、感染が成立(病気が起こされる)するため、2次感染もおこりやすいのです。
症状 症状としては、軽い下痢、激しい腹痛と水様便、著しい血便から死に至る合併症を起こすものまでさまざまです。中には、無症状の場合もあります。血便は著しく、強い腹痛とともに、便というより血液そのものが出てくる、という感じになることがあります。
合併症として、ベロ毒素による溶血性尿毒症症候群(HUS)という大変重篤なものがあります。腎不全、けいれん、意識障害、溶血、多臓器不全などの症状が出てきて、死亡することもあります。患者さんの5%程度に合併します。
治療 胃腸炎症状だけで、特に合併症がない場合には、胃腸症状とそれによる脱水症状の治療、抗生剤の投与が主体となります。細菌性腸炎では、いわゆる下痢止めは使いません。下痢を止めてしまうと、菌が長いこと腸の中にとどまってしまい、悪い影響を与えることになってしまいます。整腸剤は、整腸剤の中の主成分である乳酸菌が病原菌を駆逐する、という効果を期待して投与されます。下痢嘔吐がひどく、脱水になってしまった場合には、点滴などによる水分補給を行います。
HUSに対しては、腎不全の治療、脳浮腫の治療、出血傾向の治療、DICの治療等を状態によって行います。毒素を血液から取り除く血漿交換、というのを行うこともあります。 |
しっかり加熱すれば、病原性大腸菌は死滅します。70℃1分間で死滅する、といわれています。ですが、たとえばハンバーグのように、中が生焼けになりがちな食品では、菌が残りやすいですから要注意です。また、調理した食品はなるべく早く食べきることも大切です。
人から人への感染では、患者さんの便中の菌が他の人の口の中に入って感染するので、患者さんとその周囲の人が手洗いを徹底すれば感染は防げます。 |