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麻疹流行について
2007.7
今年もまた、麻疹の流行が起きてしまいました。
麻疹は、もしワクチンが無かったら、1000人に1人は命を落とす病気です。このように致死率の高い病気が、これだけ流行るというのは、大変こわいことです。
麻疹が流行すると、ワクチンをまだ受けていない乳児は、命を危険にさらすことになります。日本から麻疹をなくすこと、これが私たち小児科医の願いです。

今年はワクチンを受けて罹ってしまう中学生、高校生、大学生が多かったのも事実です。千葉市で報告された患者さんのうち、ワクチンを受けていて麻疹にかかってしまった方が 60%以上いました。
なぜこのようなことがおこるのでしょう?困りますよね!?

予防接種によって得た免疫は、病気が減って麻疹と接触する機会がなくなると、抗体が下がってきます。抗体が下がった時点で麻疹と接触すると、低下した抗体では発症をおさえられず、病気になってしまうのです。
では、どうしたら良いか?

いっそ罹ってしまったほうがよい・・?これは絶対にダメです。試しに罹ってみる、というほど、麻疹は軽いものではありません。命を落としたりすることもありますし、一旦治っても、数年後に発症するSSPE*というこわい脳炎のリスクを負ってしまいます。感染力が強いため、人に感染させてしまうという危険もあります。

抗体を高く保てば、麻疹には罹りません。そのためには、抗体を保つように、ワクチンを何回か受ければ良いのです。
ワクチンの副反応は確かにゼロではありませんが、100万人に1人以下です。
麻疹に罹ると、1000人に1人は亡くなるわけですから、どちらが安全かは一目瞭然です。

麻疹撲滅を達成している諸外国は、どこも2回接種を導入し、撲滅に成功しています。
日本でも、ようやく、今年の小学校一年生から、麻疹のワクチンを2回受けられることになりました。しかし、小学校2年生以降の世代は、麻疹のワクチンを一度しか受けていない人がほとんどです。
抗体が下がってきた人達を中心に、今後麻疹の流行は繰り返されていくことが、今年の流行をみても、十分に予想されます。
<キャッチアップ接種を!>
麻疹撲滅を達成した国が行っているワクチン作戦の1つに、キャッチアップ接種というのがあります。一定年齢の人達を対象に、ワクチン接種歴、罹患歴を問わず、一斉にワクチン接種を行うことです。
韓国では、2回接種を導入しても麻疹流行がおさまらず、2001年にキャッチアップ接種を導入、 8才から 16才までの子どもたち全員にワクチンを接種し、麻疹撲滅を達成しました。日本でも、是非キャッチアップ接種を導入して欲しいものです。
<ワクチン不良?千葉県の特殊事情>
平成14年の冬、当院の近隣で麻疹が流行しました。そのとき、麻疹ワクチンを受けて、一年しか経っていない2歳児が何人か、ワクチンを受けていない場合と同じくらい重症な麻疹を発症しました。この子どもたちは、C血清という会社製のC5-1というロット番号のワクチンを受けていました。明らかにおかしいと思い、C血清に問い合わせをしましたが、国家検定は通っているワクチンである、ということから、特別な対策はとってもらえませんでした。しかし、実は、沖縄でもこのワクチンが弱いということが問題になり、C血清が費用を負担してワクチンの再接種をしていたということが、翌年の朝日新聞で明らかにされました。沖縄で再接種をしているワクチンのロット番号は、C5-1、 C5-3、C4-7です。

もし、問題がないワクチンならば、なぜワクチン会社が費用負担までしてワクチン接種をしたのでしょう。その事情が明らかにされないまま、C血清は、平成14年3月で廃業してしまいました。
その後、何の対策もとられず、今にいたっています。この会社がなくなってしまった今、本来なら、検定を通した国が、きっちりと調査を行い、対応策をとるべきです。しかし、 残念ながら、そのような動きはありません。

このワクチンを受けた子どもたちは、千葉県内に数千人いることがわかっています。現在(平成19年)の小学校2年生が中心です。この年代に、抗体が低い子どもたちが多くいることが予想されます。実際、いくつかの小学校で、この学年での集団発生が見られています。ぜひ、早い時期に2回目接種を行い、この子たちを麻疹から守るべきだと思います。    

しかし、ワクチンを受けた子どもたちへの感染がこれだけ増えてきた今、程度、頻度の差こそあれ、この子たちだけが特殊事情というわけではないということが、近年の流行では明らかです。一日も早く、小学校2年生以上の子どもたちに、2回目の接種を!これは緊急課題です。
国が、制度として、2回目の接種を行ってくれることが望まれます。

しかしいつになるかわからない、国の対応を待っている間に、子どもたちが麻疹に罹ってしまっては元も子もありません。
小学校2年生以上で、麻疹ワクチンを一回しか受けていないお子さんをお持ちの方は、現時点では費用がかかってはしまいますが、是非、2回目の接種を受けさせることをお勧めします。

今回の麻疹流行によって、ワクチンがあっという間に不足しました。本来、ワクチンは病気が流行ってから接種するものではありません。予防接種は計画的に!健康状態の良いときに、接種をうけるようにしましょう。

*SSPE 亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis :SSPE):麻疹ウイルスに感染後、特に学童期に発症することのある中枢神経疾患。知能障害、運動障害が徐々に進行し、ミオクローヌスなどの錐体・錐体外路症状を示す。発症から平均6〜9カ月で死の転帰をとる、進行性の予後不良疾患である。発生頻度は、麻疹罹患者10万例に1人、麻疹ワクチン接種者100万人に1人。


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