病気と予防

胃腸炎のときの水分の取らせ方

2013.5 記

毎年、冬から春先にかけてウイルス性の胃腸炎が流行します。“胃腸炎”の項でもお話しましたが、胃腸炎の治療のはじめはとにかく水分補給です。
患者さんに話をきくと、けっこうお茶やお水を飲ませていることが多いです。
水だけ飲んでいると、量は飲めているのに、ぐったりして元気がでない、ということがあります。
吐いているときに、採らせる水分には塩分が含まれていることが重要です!!

嘔吐、下痢により、体からは水分と塩分がどんどん失われていき脱水状態になってしまします。水分だけを失うわけではありません!!失われた以上に水分と塩分を取らせなければ、子どもはどんどんぐったりしてしまいます。
そして水やお茶など塩分・糖分を含まない水分ばかり飲んでいると、体は塩分不足になり、血液の中のナトリウム濃度が低下して、脱水状態が悪化することがあります。また、糖分が不足し、血糖値がさがってしまうこともあります。
市販のスポーツ飲料は塩分濃度があまり高くありません。必要な塩分濃度の半分以下の濃さです。大人用だから薄めてのませた、という話をよく聞きますが、これは大間違い。逆のことをやっちゃっています。

 

胃腸炎のときの水分補給に最も適した飲み物は、経口補水液です。これは水分や塩分を腸からより速やかに吸収できるように、水分塩分糖分をバランスよく配合した飲み物です。
この経口補水液を少量ずつ頻繁に口から飲ませることで、たいがいは点滴などの痛い治療を受けなくてもよくなります。

10kgの子ども・・・1回10mlを5分に1回。1時間で120ml
15kgのこども・・・1回15mlを5分に1回。1時間で180ml

というように、スプーンやスポイトなどで飲ませてください。
市販されている経口補水液には、
<OS-1><ORS>などがあります。
自宅でも、水1リットルにつき、砂糖40g食塩3gを加えて作ることができます。

一度にたくさん飲ませると胃腸に負担がかかり、吐いてしまいます。“少量ずつ頻繁に”が大事です!3.4時間このようなやり方で水分をとらせ、吐き気がなくなってきたら、1回量を増やして本人の好きなように飲ませましょう。

子どもは、発熱やひどい咳など他の病気でも、食欲がなくなったり吐いたりすることは多く、脱水状態になりやすいです。病気により十分な水分、塩分が取れないときは胃腸炎でなくても経口補水液を飲ませるといいですね。
点滴は、とても効果のある治療、と思っていらっしゃる方が多いと思います。
しかし、点滴で血管に直接水分をいれるより、胃腸を通して水分を補給した方が、胃腸の機能の回復が早いといわれています。
お父さんお母さんがやさしく手間ひまかけて水分をとらせてあげることは、病気でつらいときにしっかり看護してもらったという温かい思いを子どもの中に残すはず。がんばって飲ませてみましょう。
少しずつ飲ませてもしばらくすると吐いてしまう、下痢も嘔吐も大量でぐったりして手足も冷たい、どうしても飲んでくれない、などのときは点滴治療が必要になります。

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